要約
- Tenun Ikatは、インドネシアの伝統的な手織り技法で、
糸を染めた後に模様を織り上げて作られる、歴史的・文化的に重要な織物技法です。 - スンバ島、バリ島トゥガナン、東ヌサ・トゥンガラ州などの地域で、
独自の技法や意味を持つ織物が作られ、それぞれ特徴的なモチーフや製作過程があります。 - 主に女性職人によって作られ、宗教的儀式、社会的地位の象徴、商業的目的など、
多様な役割を果たしてきました。 - 製作工程は複雑で、染めたくない部分に糸をくくりつけ、
天然染料で染色し、はたおり機で織り上げるという高度な技術を必要とします。 - 現代では文化遺産として重要視され、
観光業の発展とともに土産物やファッションアイテムとしても人気を集め、伝統的技法と現代的デザインを融合させています。
1. Tenun Ikatとは?
Tenun Ikat(テヌン・イカット)は、インドネシアに伝わる伝統的な手織り技法であり、
糸を染めた後に模様を織り上げて作っていきます。
インドネシア語では「結ぶ」ことをmengikatと言い、
その動詞のikat部分が絣布の共通語として世界に広まったと言われています。
2. 歴史的背景
インドネシアでつくられた絣布を表すイカットという言葉は、
現在ではインドネシアのみならず、
アジアでつくられた絣布全般に対しても使用されるようになりました。
しかし、インドネシアでは、実は絣布を指す言葉はそれぞれの地域によって異なり、
国全体で共通する絣布の名詞は元々ありませんでした。
イカットという言葉は比較的新しい時代に広まったといわれており、
一説には絣布づくりを眺めていた海外からの訪問者が、
その布づくりの括りの工程の説明を受けた際に、
布の名詞と勘違いをして呼ばれ始め広まった言葉とも言われています。
イカットと呼ばれるようになったのは、
1970年代なので、「イカット」という呼称は、歴史としては新しい物であったりします。
3. 主な地域
Tenun Ikatはインドネシアのさまざまな地域で作られていますが、
特に有名な地域は以下の通りです。
- スンバ島: ノニの根、木の繊維、泥などの天然素材から抽出されるテヌン・スンバは、
制作期間に約3年、42工程を必要とする非常に高価な織物です。
織物の柄にはそれぞれ意味が込められています。例えば、馬のモチーフは馬が名誉の象徴であることから、英雄、威厳、高貴さを象徴しています。 - バリ島トゥガナン:トゥガナンのイカットであるテヌン・グリンシンは、
ダブルイカットの技法を使った唯一の織物です。
現地の言葉で「gring(=病気)」と「sing(=ない)」を組み合わせた言葉で、
文字通り、身体的・精神的な病気を遠ざけるものとして考えられています。 - 東ヌサ・トゥンガラ州(East Nusa Tenggara):この地域のフローレス織は、
20ヶ月以上の制作期間をかけて作られる非常に芸術性の高い織物です。
フローレス織は、いくつかの地域でそれぞれ作られており、
各地域には様々なモチーフや模様、色などの特徴があります
4. 誰が作り、なぜ作られるのか?
Tenun Ikatの製作は、インドネシアの伝統的な家庭内作業として行われています。
特に、女性職人が中心となって織り上げることが多いです。
Ikatの制作には数週間から数ヶ月を要し、
家庭の重要な生計手段の一つとされています。
また、技術やデザインは世代を超えて受け継がれ、家族内で学ばれることが一般的です。
作られる目的:
Tenun Ikatは、主に以下の目的で作られます:
- 宗教的儀式:神聖な儀式や祭りで使用され、
神への奉納や祝福を祈念するための重要なアイテムです。 - 社会的地位の象徴:高級なIkatは、特に王族や貴族の衣服として使われ、
社会的地位を象徴します。 - 商業的目的:近年では、観光業の発展により、
土産物やファッションアイテムとしても需要が増しています。
5. 製作工程:どのように作られるのか?
Ikatの製作工程は非常に手間がかかり、熟練した技術を必要とします。
5.1 柄の染めたくない部分に、糸をくくりつける
イカット生地の完成を想定して、染めたくない部分に糸を強くくくりつけます。
5.2 染め上げる
糸を付けたまま伝統的な染料を使って染色します。
すると、染めたくない部分以外の糸が染色されます。
伝統的な染料:多くの地域では、天然の植物や鉱物から得た染料が使用されます。
例えば、インディゴ(藍色)はよく使用される染料の一つです。
5.3 イカットを織り上げる
はたおり機にて、イカット生地を織っていきます。そして織り上がれば、独特な柄をしたイカット生地の完成です。
6. 現代におけるTenun Ikatの重要性
現代のインドネシアでは、
Tenun Ikatは依然として文化遺産として非常に重要な役割を担っていますが、
商業的にも広がりを見せています。
特に観光業の発展とともに、Tenun Ikatは土産物としても人気を集めており、
ファッションやインテリアに取り入れられることが増えています。
また、伝統的な技法を守りながらも、
現代的なデザインを取り入れることで、
若い世代にも受け入れられるようになっています。
7. まとめ
Tenun Ikatは、インドネシアの豊かな文化と歴史を物語る重要な織物技法です。
その精緻なデザインと手間のかかる製作過程は、
地域ごとの独自性を強調し、今なお多くの人々によって守られています。
宗教儀式から日常の衣服、さらには現代の商業利用に至るまで、
Tenun Ikatはインドネシアの社会で深い意味を持ち続けています。
参考文献
Telkom University(10/09/2024 updated) Menjelajahi Macam-Macam Kain Tenun : Keindahan dan Keberagaman Kriya Tekstil Indonesia (https://bcaf.telkomuniversity.ac.id/menjelajahi-macam-macam-kain-tenun-keindahan-dan-keberagaman-kriya-tekstil-indonesia/, Accessed on 17/11/2024).